[Python] PyJWT で Google OAuth 2.0 API の ID Token を検証¶
PyJWT を用いて、Google OAuth 2.0 API で取得した ID Token を検証する実装について。
注釈
ID Token を取得する方法についてはここでは触れません。
Python で簡単な検証アプリを作る場合は Tornado の組み込みのmixinを使うと割合簡単にできます。
ID Token とは¶
基礎的な話は今更な感もありますが、検証に必要になる知識については触れていきます。
ID Token は OpenID Connect (OIDC) に準拠した認可サーバ( Identity Provider )で、認証に成功した結果得られるトークンです。
ID Token の中身は JWT ( RFC7519 ) で表される文字列データであり、大抵の場合は ヘッダ.ペイロード.署名 の3つの部分に分けられます 1 。
具体例として、実際に Google で認証して取得したトークンを以下に記載します。
# 見やすさのために改行、および実データな都合上一部省略
eyJhbGciOiJSUzI1NiIsImtpZCI6IjI2ZmM0Y2Qy
M2QzODdjYmM0OTBmNjBkYjU0YTk0YTZkZDE2NTM5
OTgiLCJ0eXAiOiJKV1QifQ.eyJpc3MiOi(省略).cnY5xzp(省略)
ヘッダ・ペイロードはそれぞれ base64url でエンコードされた JSON 文字列な為、デコードすることでデータを確認できます。PyJWT の get_unverified_header
関数で 上記の ID Token のヘッダを取得してみます。
# $ pip install pyjwt # == 1.7.1
# $ python
Python 3.7.1 (default, Oct 24 2018, 22:35:30)
[GCC 6.3.0 20170516] on linux
Type "help", "copyright", "credits" or "license" for more information.
>>> from pprint import pprint
>>> import jwk
>>> id_token = "eyJhbGciOiJSUzI1NiIsImtpZCI6IjI2ZmM0Y2QyM2QzODdjYmM0OTBmNjBkYjU0YTk0YTZkZDE2NTM5OTgiLCJ0eXAiOiJKV1QifQ.eyJpc3MiOi(省略).cnY5xzp(省略)"
>>> header = jwt.get_unverified_header(id_token)
>>> pprint(header)
{'alg': 'RS256',
'kid': '26fc4cd23d387cbc490f60db54a94a6dd1653998',
'typ': 'JWT'}
alg, kid, type
は JWS ( RFC7515 ) でヘッダパラメータとして定義されています。 kid
は署名の際にどの鍵が使われたかを示すIDです(検証で必要になります)。
同様に、ペイロードもデコードしてみましょう。PyJWT では jwt.decode()
関数に verify=False
をオプションとして加えると、検証なしでデコードすることができます。
>>> # 個人情報的なところは適宜捏造しています
>>> claims = jwt.decode(id_token, verify=False)
>>> pprint(claims)
{'iss': 'https://accounts.google.com',
'azp': 'xxx.apps.googleusercontent.com',
'aud': 'xxx.apps.googleusercontent.com',
'sub': 'xxxx',
'email': 'xxxx@example.org',
'email_verified': True,
'at_hash': 'xxxx',
'name': 'Yk rods',
'picture': 'https://example.org/photo.jpg',
'given_name': 'Yk',
'family_name': 'rods',
'locale': 'ja',
'iat': 1556240765,
'exp': 1556244365}
これらの各属性は Claim と呼ばれます。 Claim はユーザ自身の属性、もしくは認証イベントに関する情報であり、OpenID Connect Core 1.0 の 5. Claims 以下で定義されています。
Claim のうち、検証に関係するものをピックアップして下記にまとめます。
name |
description |
---|---|
iss |
issuer, JWTの発行者を識別する情報。 |
aud |
audience, 誰に対して発行されたJWTなのかを示す。CLIENT_ID が入る |
exp |
expiration time, ID トークンの有効期限。Unix time で表現される。 |
ID Token の検証¶
前節で触れたように、 claim の情報自体は簡単に取得できます。しかし逆に考えるとヘッダ・ペイロード部は誰でも簡単に作成できるということでもあります。例えば「ネイティブアプリやSPAなどで外部の Identity Provider から ID Token を取得し、自身のサーバサイドアプリケーションに送信する」ような場合、そのトークンが本当に期待した Identity Provider から発行されていかどうかを検証する必要があります。
ID Token の検証手順は、以下で記述されています。
OpenID Connect Core 1.0
また Googleのドキュメント にも記載があります。
要約すると Google 認証の場合は以下の項目を検証すれば良いようです。
JWT の署名が正しいか確認する
claim の iss が https://accounts.google.com もしくは accounts.google.com であることを確認する
claim の aud が Google API Console で作成した CLIENT_ID と等しいことを確認する
claim の exp が 有効期間内であることを確認する
署名の検証¶
一般的に、署名の検証というと以下のような流れになります。
署名アルゴリズムを確認
署名者が配布している公開鍵を取得
メッセージ(署名対象のデータ), 署名, 公開鍵を入力とし、アルゴリズムに合わせた検証処理を行う
トークンの署名アルゴリズムはヘッダー alg: 'RS256'
で示されています。ちなみに alg の有効な値は RFC7518: JSON Web Algorithms (JWA) で定義されています。( RS256: RSASSA-PKCS1-v1_5 using SHA-256 の詳細な検証手順については割愛)
ここで疑問になってくるのはJWTの場合に「公開鍵をどうやって取得するか」です。
公開鍵の取得¶
Google のドキュメントには署名について以下のように記載されています
Verify that the ID token is properly signed by the issuer. Google-issued tokens are signed using one of the certificates found at the URI specified in the jwks_uri field of the discovery document.
—https://developers.google.com/identity/protocols/OpenIDConnect?hl=ja
ここで、 discovery document は同ページに記載されている
https://accounts.google.com/.well-known/openid-configuration
であり、実際の値は
"jwks_uri": "https://www.googleapis.com/oauth2/v3/certs"
となっています。ではこのURLを curl で叩いてみましょう。
# (2019-04-29 取得)
$ curl https://www.googleapis.com/oauth2/v3/certs
{
"keys": [
{
"use": "sig",
"kid": "26fc4cd23d387cbc490f60db54a94a6dd1653998",
"e": "AQAB",
"kty": "RSA",
"alg": "RS256",
"n": "wbRc_hVBiEGE_syqdbnkeEx-GQEAOuqBbgSIn1HgS0xaOqjk8trHi0FNTLg_Pmajo4f3rWedlh_ABGyJeNR5TphqURGemAdg51B3eANOrykzJgg9824rjWII94RxRoeLVEqdU3d0G6nPx2d7Tz2P2w9vN0CdKQTnXG1bpbtOCd4RPw_jNvNFlnnrdrYum7wE9mju4uTCVlTcUz6hZIG_wQp1uLbaWRWFxiTzYkRdQhqutBzixo9VE8eLUPotjDltnvGuQbtHOQwOXKUEWxCTXa1wT4l61YHLo2aMGxTpzC7B14G323ekY2t_24RF213ewGTzImzFvYCBoLXZEJJUwQ"
},
{
"kid": "5d887f26ce32577c4b5a8a1e1a52e19d301f8181",
"e": "AQAB",
"kty": "RSA",
"alg": "RS256",
"n": "13GdrD5sfUui84PIHNURTtbu_blCXOHMg26buwcNbXWmvb9gDAT29qBrNB2MFi-YAi04mgEj2so9sF-u1oiha8iJbzn8FZaJ76WPyfE4SaPhy9FSin569Yx3wPoZYVKRoFc5ZU4h_qjYRKO_Jx7_uyoHam8-El07DmsDJnzs00VjU1NTiHZz1PwrjOZslYJChHU9AwM_NcInB2pPGFm3eFetLDkkTOH-Tt27TCeIr_bUp09dCIGcdDwcY9wRknqlKXatgF3Ec9SmGCIb9uJKTM-_O9pOmRz4sVAlx9bA01xIkWELAZd8VhEtogzEkIYOtKdQTheRqky54hNPtWMu1Q",
"use": "sig"
}
]
}
さて、 "kty": "RSA"
の部分からRSAアルゴリズムなのはわかりますが、普段見る PEM 形式の公開鍵ではありません( -----BEGIN PUBLIC KEY-----
で始まるもの)。なんなんでしょうかこれは...?
実は先ほど登場した discovery document は OpenID Connect Discovery 1.0 という仕様に従っており、 OpenID Provider Metadata にてそれぞれのメタ情報が説明されています。この中で jwks_uri は「JWK Set のURL」と記述されています。
JWK (JWK Set)¶
JWK ( RFC7517 ) は暗号鍵をJSONで表現する仕様です。
JWK Set は JWK の集合であり、 keys: [ jwk1, jwk2, ...]
というフォーマットになります。
google の場合、上述したように JWK が二つ定義されていますが、これは JWTのヘッダに含まれる kid と同じ JWK を選べば OK です。
PyJWT でRSA公開鍵を扱う場合、 jwt.algorithms.RSAAlgorithm
を使います。
また、PyJWT で公開鍵を扱う際は pyca/cryptography のインストールも必要になります。
pip install cryptography # == 2.6.1
>>> from jwt.algorithms import RSAAlgorithm
>>>
>>> jwk_json = """{
... "use": "sig",
... "kid": "26fc4cd23d387cbc490f60db54a94a6dd1653998",
... "e": "AQAB",
... "kty": "RSA",
... "alg": "RS256",
... "n": "wbRc_hVBiEGE_syqdbnkeEx-GQEAOuqBbgSIn1HgS0xaOqjk8trHi0FNTLg_Pmajo4f3rWedlh_ABGyJeNR5TphqURGemAdg51B3eANOrykzJgg9824rjWII94RxRoeLVEqdU3d0G6nPx2d7Tz2P2w9vN0CdKQTnXG1bpbtOCd4RPw_jNvNFlnnrdrYum7wE9mju4uTCVlTcUz6hZIG_wQp1uLbaWRWFxiTzYkRdQhqutBzixo9VE8eLUPotjDltnvGuQbtHOQwOXKUEWxCTXa1wT4l61YHLo2aMGxTpzC7B14G323ekY2t_24RF213ewGTzImzFvYCBoLXZEJJUwQ"
... }"""
>>>
>>> public_key = RSAAlgorithm.from_jwk(jwk_json)
>>> public_key
<cryptography.hazmat.backends.openssl.rsa._RSAPublicKey object at 0x7fd3f79024a8>
少し脱線しますが 「JWK が公開鍵を表しているなら、 PEM に変換可能なはず」というのは自然な発想ですが、これを自前で実装しようとするとそれなりに大変です。しかし PyJWT (cryptography) を使えば以下のコードで変換できます。
>>> from cryptography.hazmat.primitives import serialization
>>> pem = public_key.public_bytes(encoding=serialization.Encoding.PEM, format=serialization.PublicFormat.SubjectPublicKeyInfo)
>>> pem
b'-----BEGIN PUBLIC KEY-----\nMIIBIjANBgkqhkiG9w0BAQEFAAOCAQ8AMIIBCgKCAQEAwbRc/hVBiEGE/syqdbnk\neEx+GQEAOuqBbgSIn1HgS0xaOqjk8trHi0FNTLg/Pmajo4f3rWedlh/ABGyJeNR5\nTphqURGemAdg51B3eANOrykzJgg9824rjWII94RxRoeLVEqdU3d0G6nPx2d7Tz2P\n2w9vN0CdKQTnXG1bpbtOCd4RPw/jNvNFlnnrdrYum7wE9mju4uTCVlTcUz6hZIG/\nwQp1uLbaWRWFxiTzYkRdQhqutBzixo9VE8eLUPotjDltnvGuQbtHOQwOXKUEWxCT\nXa1wT4l61YHLo2aMGxTpzC7B14G323ekY2t/24RF213ewGTzImzFvYCBoLXZEJJU\nwQIDAQAB\n-----END PUBLIC KEY-----\n'
PyJWT で Id Token を検証する¶
想像を超えて前置きが長くなりましたが、ようやく検証に必要な情報が揃いました。最初に検証なしで jwt.decode()
を使いましたが、今度は検証ありでデコードしてみましょう。
検証する場合、引数には id_token, public_key の他、issuer に https://accounts.google.com
, audience に CLIENT_ID
を指定します。これは iss, aud の検証を PyJWT 側でやってくれているということですね 2 。
GOOGLE_ISSUER = 'https://accounts.google.com'
CLIENT_ID = 'YOUR_CLIENT_ID'
claims = jwt.decode(id_token,
public_key,
issuer=GOOGLE_ISSUER,
audience=CLIENT_ID,
algorithms=["RS256"])
また、 https://pyjwt.readthedocs.io/en/latest/usage.html#expiration-time-claim-exp にある通り、 exp の検証もデフォルトで行ってくれるため、ID Token の検証はこの関数呼び出しで完了することになります。素晴らしい。
コード例¶
まとめると、JWTの検証はこんな感じに書けます。
# tornado アプリを使って検証したため AsyncHTTPClient を使っていますが、requests等でも問題ないです
import json
import jwt
from jwt.algorithms import RSAAlgorithm
from tornado.httpclient import AsyncHTTPClient
JWKS_URI = 'https://www.googleapis.com/oauth2/v3/certs'
GOOGLE_ISSUER = 'https://accounts.google.com'
CLIENT_ID = 'YOUR_CLIENT_ID'
def validate_id_token(id_token):
header = jwt.get_unverified_header(id_token)
http_client = AsyncHTTPClient()
res = await http_client.fetch(JWKS_URI)
jwk_set = json.loads(res.body)
jwk = next(filter(lambda k: k['kid'] == header['kid'], jwk_set['keys']))
public_key = RSAAlgorithm.from_jwk(json.dumps(jwk))
claims = jwt.decode(id_token,
public_key,
issuer=GOOGLE_ISSUER,
audience=CLIENT_ID,
algorithms=["RS256"])
return claims
Footnotes
- 1
ID Token は署名のみの JWS ( RFC7515 ) と、署名+暗号化の JWE ( RFC7516 ) があり、後者の場合は5パートに分かれた文字列になる。
- 2
https://pyjwt.readthedocs.io/en/latest/usage.html#issuer-claim-iss に記載がある
Updated on 2020-04-18
一般的な署名の検証のところで「署名とダイジェストの値が一致するかを確認」と書いていたが、ダイジェストと署名が一致したら誰でも署名作れるわという話なので修正しました..
[Python] PyJWT で Google OAuth 2.0 API の ID Token を検証 — ykrods note
https://www.ykrods.net/posts/2019/04/30/pyjwt-id_token-validation/